たかが?開業医の待合室、されど待合室。
(写真はイメージ)
私のかかりつけ医院ではない。
夫が縁あって紹介された開業医の待合室だった。
最近、リニューアルしたりして最新式の、間接照明で優しく、受付のカウンターからしてホテルのチェックインカウンターかと思わせるような開業医などがあって、
「病院も変わったな~。」
と、雑誌の置き方までデザイン化されたような、居心地のよさそうな病院もある。
でも、私が興味を持ったのは、そんな最新式の病院ではない。
ある循環器科の病院だった。
受付カウンターは背後に患者のファイルの棚がある普通の形だった。
そして患者が待つ椅子が反対側の壁に添って、ソファのように並んでいる。
そこには長椅子のみという風ではなくて、温か味のある色使いのクッションがソファの区切られた分の数置かれていた。
「何か家って感じで座り易そう・・。」
とゆったりと座ってみた。
勿論照明も機能一辺倒の蛍光灯ではなく、白熱球に近い色合いの間接照明だったと思う。
待合室を優しく包んでいた。
ソファの向かい側に大型薄型TVが、ヨーロッパの「電車の旅の風景」を流し続けていた。
環境DVDが流れているのだろう。
「午後のワイドショー」などという騒がしいコメンテーターなんてものとは別世界だった。
「何か雰囲気が違うな~。」
と、あちこちに目を凝らしてみた。
壁に掛かった絵。
選んだ人の「目」の持ち主を想像し始めている自分がいた。
吟味された、落ち着いた、派手ではない、そこで自己主張するわけではないが、存在感は半端ではない絵が、普通に掛けられている。
内心では、
「高価だろうな。(単純に、流石、開業医の蒐集した絵ばかりだ。)」
と一点物だと思われる画家のサインを見て、驚いたりした。
そんな絵が1Fにも、診察室となっている2Fにも、サラッと掛けられていた。
だからと言って、高額ということを誰でもが知っているミーハー的な絵は一枚もない。
「院長の趣味なんだろうか、どんな人なんだろう。」
と、循環器の医師ということより、掛けられている絵を、この診察空間に違和感なく
溶け込ませている芸術に対する向き合い方に、すぐに惹かれるものがあった。
ギュウギュウでも座れればいい、ではなくて、待っている間も少しロビー的にリラックスできれば、との意図が見える少し離れた場所にも、環境DVDが流れ、オブジェ?と呼べそうな縫いぐるみが床に置かれていた。
吹き抜けの手摺が素敵だったので、私はその立っていた猫の縫いぐるみを手摺に這わせてみたくなって、手摺を抱え込ませた。
猫が生き生きした。
では、きっとトイレにも何かがある、と早速興味深々。
もう、夫の診察はどこかへ吹き飛んでいた。
やっぱり。
機能一辺倒ではない。
トイレの扉が、木製のしっかりした温か味のあるものだった。
「落ち着くな~。」
機能は勿論、申し分ない。
清潔感も完璧。
で、ちょっと、いい意味で意外だったのが、我が家でも使っている
「ちょっと汚れた時に、さっとスプレーして汚れを残さない」トイレ用スプレーが置かれていた。
これは、看護師さん達の管理の範囲の場所だろうから、主婦の目線での洗剤だろう。
医療用の専門的な消毒剤でなくて、
「気づいたら、ちょっと拭いておいてね。」
程の家庭的な洗剤に頬が緩んだ。
一時間位いただろうか。
医師とも、看護師とも、話したし、他の患者さんもいた。
けれど、病院へ行って診察した、という気分より、居心地のいい場所にいたという気分の
方が大きかった。
今まで行った病院の中で、あそこなら少々待たされてもそんなにストレスにならない、
癒しの、落ち着いたインテリアの病院でした。
本当は、・・・もっとゆっくりとじっくりと他の絵も観ていたかったのです。
壁の前に患者さんが座っていたら・・・、やっぱり観れないですよ。残念。