猫の主張
15歳になる牡猫と暮らしている。
毎朝の散歩は2002年に、
我が家にやって来てからずっと続けている。
もし、私が猫で、外に出られないとしたらどうだろうか?と考えた結果始めたことだ。
室内が快適に整えられていたとしても、土の感触も、外猫の匂いも、人の気配も、車の騒々しさも、草の味も、
みんな知らないで、一生を閉じ込めておくのが幸せだろうか?
外猫とのバトルもあるし、交通事故ということも考えられるので、それならワンコのように散歩時間を決めて
私と散歩をすればいいんだ、と決めた。
散歩中、リードの先が猫だとわかると、
「え?猫の散歩?」
と、驚かれる。
猫は好きな場所にどんどん私を連れて行く。
基本行きたい場所に行かせて、私はただのお供。
好きな草があると、ムシャムシャと食べる。
暫くすると、その草を「オエ!オエ!」と身体中を震わせて吐く。
外猫が匂いを付けたり、オシッコしてある場所では、舐め回すように匂いを嗅ぎ、自分の匂いを擦り付ける。
そうして、自分の縄張りを侵略されないようにしておくようだ。
なので、犬の距離を歩く散歩と違って、縄張り確認作業の見回りになる。
だから、私の健康も兼ねてのウォーキングとしては役に立たない。
本当に家と近隣のお宅の周りを嗅ぎ回るようなお散歩だ。
コンクリートの床で全身をこすり付けて、一回転したりして、満足そうな表情を見せる。
私は、それらの作業を見守って、じっと待ち、狭い通路にも、入れる範囲で蟹さん歩きで付いて行く。
ただ、面白いのが、こんな時はよくしたもので、猫の方が私を気遣ってくれる。
「大丈夫?通れる?」
みたいな風情で振り向いて待っていてくれる。
やっと通り抜けると、
「こっちだよ」
と、言ってるように、どんどん好きな方に進んで行く。
猫の習性を全部認めてあげて、それらを何のためらいもなく実行していく猫を見ていると、わずか毎朝30分の
散歩でも、し続けることは、縁あって私の所に来てくれて、一生を私に託してくれた猫に対しての恩返し
だと思っている。
朝、ベランダで待機している猫を迎えに行くと、一旦は速足で玄関に向かうが、私の動向をきちんと伺って、遅れた私を
後ろ向きに座って、こちらをチラチラを見ながら、待っている。
猫が早く支度が出来ていれば、(おしっこや水飲み)
「ま~だ?ま~だ?」
と既に玄関の扉の前で、ニャオニャオと鳴いてせがむ。
そんな時の主張はものすごくハッキリしている。
そして、散歩終了の時間が迫ると、だいたいの時間の感覚があるらしく、
「ウ~、ウ~、ウ~」
と唸りながら歩く。
「まだ外に居たいよ~、家に入りたくないよ~」
と、言っているらしい。
最近はそれが激しくなってきて、
猫パンチと同時に「シャ~~~!!」と怒りをぶつけてきたりした。
何かの具合で、
「お散歩?行っかな~い!」
と動かない時もある。
その時は楽、楽できる~、とそのままにしておく。
猫にも、いろんな事情があるのだから、その気持ちに添ってお供することにしている。
猫が猫らしくいれるために・・、だって「ツンデレ」は猫の専売特許ですもの。
それにしても、いろんな主張を堂々とする猫を私達家族は「プリンス」とお呼びしたりする。